2014 2014但馬のシカ被害を考える会
勝手に名前をつけましたが、正式には「氷ノ山周辺の自然を考える報告会」、主催は「新さわやかな環境づくり但馬地域行動計画推進協議会」で、但馬県民局と鳥取県の共催。
なんと長い名前でしょうね。
会場は日高町神鍋高原の西気コミュニティセンター、兵庫県各地や鳥取県からの参加者で会場は満員、シカ被害問題の関心の高さが分かります。
会場 レジュメ
基調報告として、「但馬地域におけるシカ生息状況の概要」を兵庫県立大の藤木大介准教授が、「シカによる植物被害」をテーマに、コウノトリ市民研究所の菅村定昌副代表からありました。
藤木氏は「2000年初頭に南但方面に多かったシカが香美町や蘇武・神鍋に広がり、但馬全域に増えてきていて、高所のシカが麓近くで越冬している。シカが森林に与える影響は、樹皮や植物への食害で下層植生が衰退し、裸地化による土壌浸食や植物多様性が失われる」など、森が壊れる様子が話されました。
また適正密度管理として、兵庫県が目標としている3万頭以上の捕獲が必要で、全体では達成しているものの地域格差があり、但馬北部の捕獲が少ないそうです。
但馬地域別捕獲目標と実績 今後の課題
菅村氏は奥山・川・海・高原に分けて、「稀少植物や固有種など生物多様性を含め地域の自然に対し、河川改修や里山の減少・登山者増加など人による被害の上に、いまシカがとどめを刺している」現状が話されました。
次に自然保護の取り組みを進めている5団体の代表から活動報告がありました。
①「南但馬の自然を考える会」の西垣さんから、氷ノ山古生沼・古千本湿原の固有種希少種が湿原の乾燥化とシカの食害で衰退しているのと、山頂のトイレ休憩所・登山客の増加による問題に対し、立ち入り制限ロープ張りやシカ網の設置などの保護活動が報告されました。
②「兵庫ウスイロモドキを守る会」近藤さんから、鉢高原に生息しているウスイロモドキ(ヒョウモン蝶類)が餌とするオミナエシの減少や人が山には入らなくなり草刈りが減少したことなど草原環境の変化と保護活動が報告されました。
③鳥取県「氷ノ山ネイチャークラブ」山本さんからは氷ノ山周辺のコキンバイ、サンカヨウ、キャラボク等へのシカ被害と防護柵や登山道の崩れ防止の階段設置の活動。
捕獲したシカの肉と皮の有効利用にも触れられました。
④鳥取県「ニホンジカによる食害から氷ノ山の高山植物を守る会」の戸井さんから氷ノ山山腹のサンカヨウ群落・キンバイソウへの被害だけでなく、檜の樹皮食害や鉄道及び車輌への衝突の被害が、併せて電気柵の設置、くくり罠による捕獲等の活動も報告されました。
⑤地元「神鍋山野草を愛でる会」案内人泉さんから、5年にわたる神鍋高原の観察で見つけた自然植物850種と希少種の観察と保護活動が報告されました。
これら植物の写真は道の駅神鍋高原のギャラリーに展示してありますが、一部のものは絶滅しているかもしれないそうです。
神鍋高原ジオエリアに自生する多様な植物を愛でつつ、貴重種も含め人やシカから守る活動が進んでいます。
続いて会長の田中さんが「神鍋高原を中心とするシカ生息調査の結果」として昨年9月から12月に渡る目撃調査結果を報告されました。
評価では広域基幹林道(蘇武妙見線)もあり、神鍋高原周辺でシカが多数住みついていて降雪前に山から下って山麓で冬越ししていることが報告されました。
広域的に見るとシカが南部から北部に移行していると推定され、被害が認められない新温泉町以外で笹など下層の植物に被害が広がり、土壌のくずれも認められるということでした。
愛でる会の活動 シカ生息調査報告
各団体の報告から分かるように、豊かといわれる但馬の自然のなかで生物多様性が人や獣(特にシカ)によって被害を受けている実態、それに対する保護団体の活動とそれでは追いつかない現状が分かってきます。
シカ被害といえば里の農作物への被害が知られていますが、それだけでなく「森が壊れてきている」「人によって壊されつつある自然にシカがとどめを刺している」この言葉が胸に響きます。
研究者や環境保護団体・自然愛好家・住民団体・個人がそれぞれの立場で、自然環境保護を考えるよい機会となりました。
シカの適正密度を保つにはロープやシカ網・電気柵の設置ではなく、狩猟やワナによる捕獲が欠かせません。
次は、3万頭超の捕獲された鹿が廃棄処分されている現状を憂い、鹿肉を食べる活動を続けている「但馬もみじの会」をレポートします。
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